宝塚歌劇団で有名な兵庫県の宝塚は、地名の由来が当地に点在する古墳(塚)にあるように、古い歴史を有しています。比較的規模の大きな前方後円墳もあるものの、群集墳が多いことに特徴があり、猪名川と武庫川に挟まれた中山連山(長尾連山)の麓や、武庫川の西の甲山周辺といった平地を見下ろす丘陵地帯に数多く造られました。近年の宅地開発でかなり破壊されてしまいましたが、それでも多少残っているようで、以前中山連山麓の中山寺を訪ねたとき、境内に横穴式石室を持つ古墳(中山寺古墳または白鳥塚古墳)を目にし、こんなところにと驚いたことがあります。古墳時代終末期の古墳のようで、丘陵の南に拡がる平野を統治していた豪族が被葬者かもしれません。古墳を境内に持つ中山寺は、仲哀天皇の皇子である麛坂皇子と忍熊皇子、聖徳太子と蘇我馬子との政争に敗れた物部守屋の霊を鎮めるため、聖徳太子によって創建されたと伝わります。高低差のある土地に建つ中山寺はエレベーターやエスカレーターを使ってお参りできるようになっており、境内は近代的な雰囲気ですが、聖徳太子開基を信じるなら千四百年以上の歴史を有していることになりますから、相当なものです。宝塚にはこの中山寺をはじめとして、千年以上の歴史を持つと伝わる寺社がいくつもあり、取り上げる清荒神もその一つです。
清荒神は中山寺から西に一キロほどの、同じ丘陵続きに鎮座しています。正式には清荒神清澄寺という真言三宝宗の仏教寺院で大日如来をご本尊としていますが、清荒神の名も冠しているように、三宝荒神もお祀りされており、神仏習合の色あいがいまなお濃厚です。創建は平安時代の寛平八年(八九六)、鎮護国家と平和を願う宇多天皇が比叡山から高僧静観を迎え、旧清と呼ばれる山の尾根に勅願寺として清澄寺を創建したと伝わります。その際西の谷には守護神として三宝荒神社がお祀りされ、長尾(中山)山系に七堂七十二坊の伽藍を擁する大寺院となり宇多天皇より日本第一清荒神の称号を下賜されます。三百年ほど繁栄が続いたようですが、戦乱などで幾度も焼失、その際荒神社だけは焼失を免れたという話も伝わっています。現在地に再興されたのは江戸時代の末のことです。
三宝荒神は仏教における三つの宝(仏、法、僧)を守る神で、三面六臂の恐ろしい姿をしています。梵天や帝釈天、大黒天のようにインドに由来する守護神ではなく、日本の仏教において神道、修験道などが混交する中で独自に発展した神とされています。荒々しい性格で穢れを嫌うことから、あらゆるものを焼き尽くし浄化する火の神の性格も合わせ持つようになり、竈の守り神として信仰を集めました。かつては台所に三宝荒神のお札を貼り火の元の安全を願った光景が見られたものです。今でも「荒神さん」として親しまれているようで、厄除開運火箸がお守りの横で売られていたり、境内の一角には厄明けまでお祀りした火箸を納める火箸納所もあったりと、現在境内では荒神さんへの信仰が目に留まります。火の神、竈の神として信仰を集めた三宝荒神ですが、竈は家庭のシンボルということで、家内安全、商売繁盛、五穀豊穣にもそのご利益が拡がっています。
先日、清荒神清澄寺で初三宝荒神の法要が営まれました。
山門をくぐると山に向かって一直線に参道が延び、突き当たりに大日如来をお祀りする本堂がありますが、その手前で左に折れる参道を上がっていくと石段の先に鳥居が見えます。そこが三宝荒神をお祀りするお社、三宝荒神大祭はこちらの拝殿で行われます。
鳥居をくぐり正面にあるのが荒神さまをお祀りする拝殿で、その奥に護法堂があります。
お参りを済ませ境内で待っていると、しばらくして法螺貝を吹く山伏を先頭に、雅楽隊が笙や笛を奏しながら石段を上がってきました。
数十分間拝殿で雅楽が奏された後、再び山伏の先導で僧侶が入場します。
一同が拝殿に入ると法要が始まりました。しばらく荘厳な雰囲気で法要が進行しますが、突如導師の力強い声を合図に大般若経六百巻を転読する大般若転読法要に移ります。僧侶らが見るも鮮やかに経巻をアコーディオンのようにめくりながら転読し最後経机に大きな音でたたきつけるということを繰り返すのですが、拝殿の外にいてもその迫力に圧倒されます。力強いこの法要は災いや悪を祓い、招福、平和、五穀豊穣を願うものとのことで、まさにこの場に身を置くことで悪いものが祓われた感じがします。
まもなく節分、節分も厄を祓い一年を無事過ごすことができるよう祈る行事です。今年は身の回りで変化が大きくまずは無事に一年を過ごすことができるよう、神仏にご加護を求めたくなります。これをご覧くださった皆様にも除災招福のご利益が届きますように。
ちなみに護法堂裏手に荒神影向の榊があります。その根元にお賽銭が投げ込まれているのですが、それを棒で引き寄せ持ち帰り大切に持っていると良運に恵まれるそうです。次回お参りの際、二倍にしてお返しするのが決まりです。

























