心に留まった風景

正倉院展

毎年恒例の正倉院展が、奈良の国立博物館で始まりました。

正倉は奈良時代に国や群、大寺院などに建てられた倉庫のことで、正倉院とは正倉が置かれた区画を指します。各地にいくつもの正倉がありましたが、現存するのは東大寺のものだけなので、いま正倉院といえば東大寺の正倉院のことです。

東大寺正倉院は、東大寺大仏殿の北に建っています。大仏殿周辺は観光客でごった返していますが、ここまで来ると、ほとんど人の姿がなくひっそりとしています。ひっそりしているだけにかえって、この大きさが際立って感じられます。真下に立つことができたら、さらにその大きさに圧倒されるでしょう。

正面は東向きで、向かって右は北になります。内部は北倉ほくそう中倉ちゅうそう南倉なんそうの三部屋に分かれ、そこに九千件近い宝物が納められています。

宝物の中心は、聖武天皇亡き後光明皇后が東大寺大仏に献納した、聖武天皇遺愛の品で、これらは北倉に納められています。

中倉には、大仏開眼会で献納された数珠やガラス器、銀器などが、南倉には東大寺の法要で用いられた仏具類、楽器、武具などがそれぞれ納められています。

これらの宝物は勅封によって厳重に管理されていますが、毎年秋に曝涼のために宝庫が開けられます。正倉院展はそれに合わせて開かれるもので、毎年異なる六十件ほどの宝物を目にすることができます。

 

今年の展示で最も印象に残ったのは、緑瑠璃十二曲長坯みどりるりのじゅうにきょくちょうはいという緑色のガラスのさかづきです。(写真は図録から撮らせていただきました)

横長で、口縁に襞がついた形が珍しく、これがさかづき?と思いましたが、このような形はササン朝ペルシャの金銀器に見られるそうです。

それにしてもこの緑の美しいこと!これは鉛ガラスに銅が混入したことで生まれた色です。どこで造られたものなのかも、どういった経緯で将来されたのかもわからない謎の酒杯という点も、魅力のうちなのかもしれません。

他にも美しい宝物が多数出ていましたが、ここではこの一点だけご紹介させていただきます。会期は本日より十一月十三日(月)までです。

関連記事

  1. 心に留まった風景

    大阪城公園の梅林

    大阪城公園は再建された天守閣を中心に、かつての城跡に玉造定番屋敷と同与…

  2. 心に留まった風景

    興福寺南円堂の不空羂索観音菩薩坐像

    西国巡礼の第八番札所は初瀬の長谷寺です。長い登廊の先に現れる本堂は、山…

  3. 心に留まった風景

    円山公園の枝垂れ桜

    東京にいた頃は、桜というと染井吉野で、上野公園や地元の川沿いの染井がし…

  4. 心に留まった風景

    蘆花浅水荘(記恩寺)

    新緑が美しい季節になると、琵琶湖の色も鮮や…

  5. 心に留まった風景

    如意谷

    たまった書類の片付けをしていたら、箕面市の史跡イラストマップが出てきま…

  6. 心に留まった風景

    松花堂

    寛永の三筆の一人として知られる松花堂昭乗(他は本阿弥光悦と近衛信伊)。…

最近の記事

連載記事

  1. 登録されている記事はございません。

アーカイブ

  1. 歴史散歩

    黒姫山古墳
  2. 古社寺風景

    鐸比古鐸比賣神社
  3. 古社寺風景

    宝積寺
  4. 古社寺風景

    金福寺
  5. 寄り道東海道

    園城寺(三井寺)
PAGE TOP