祭祀風景

六波羅蜜寺の萬燈会

なき跡をたれとしらねど鳥辺山 おのおのすごき塚の夕暮   西行

人は死んで鳥辺野に葬られるともう誰ともわからなくなってしまう、そうした死者たちの塚が無数にある鳥辺野の夕暮れに無常観を感じる。西行の鳥辺野の歌は、このような意味ですが、平安京の葬送地の一つだった鳥辺野は、地名それ自体に命のはかなさ、無常観がしみついているような気がします。

平安時代、清水寺から今熊野観音寺付近までの阿弥陀ヶ峰西麓一帯が鳥辺野と呼ばれ、北は庶民、南は貴族の墓地になっていました。

六道珍皇寺でも触れたように、その辺りが六道の辻、つまりあの世とこの世の堺と考えられていました。珍皇寺から松原通りを少し西に行くと、昔ながらの幽霊子育て飴のお店があり、向かいにはかつて鳥辺野周辺に置かれた六つの仏堂の一つ、西福寺もありで、今なお至るところに平安京の墓地だった鳥辺野の記憶が刻まれています。

空也上人開基、真言宗の六波羅蜜寺もその一帯にあり、お盆を前にした八月八日から十日にかけ、六波羅蜜寺では萬燈会が行われました。

 

境内の外はこのように多くの灯りがともされています。数多くの燈明をともして供養し、衆人の罪障を懺悔し、滅罪を祈願する法会が萬燈会ですが、六波羅蜜寺では本堂内陣に大の字に灯りをともし、精霊をお迎えし、現世の七難則滅・七福即性をお祈りする法要が営まれます。(撮影禁止のため写真はありません)

これは応和三年(九六三)空也上人によって厳修されたことに始まり、大文字の送り火の元とされています。

 

午後八時、内陣に火がともされると、五~六人ほどの僧侶による読経が始まります。外陣には立錐の余地なく大勢の人が正座をし、順番にお焼香をしていきます。

一段低くなった内陣の様子は、お焼香の順番が回ってきて初めてわかります。

黄金の柱の奥に大きなお厨子が三つ。金色に輝く扉から屋根にかけ、精緻な飛天の彫刻が施され光り輝いています。中央のお厨子にお祀りされているのが、空也上人によるとされる御本尊の十一面観音像(国宝)で、これは十二年に一度のご開帳なので萬燈会のときも扉は閉じられたままですが、お厨子それ自体の存在感は大変なもので、これだけのお厨子に納められているのですから、御本尊のお姿はさぞやと思われます。

大の字の形にともる灯りは、よく見ると一つ一つが五つの炎から成っています。つまり、平らな器に油を注いだところに大の字に灯芯が置かれ、五カ所に点火されているのです。その器が大の字に置かれ、炎による大きな「大」となって内陣を柔らかな光で照らしています。

「大」は五大、つまり地、水、火、風、空を表し、人は五大から生まれ、五大に帰っていくことから、お盆の精霊迎えの際「大」の字の燈火でお迎えをするのだそうです。

京都にはすでに精霊が満ちています。

 

(なお、十六日夕方には送り萬燈会が行われます)

 

 

 

 

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