心に留まった風景

城南宮の枝垂れ梅

三月に入り、季節の歩みが加速しています。早朝、裏の雑木林から鶯の声が聞こえるようになり、鈍色だったベランダのアイビーは少しずつ鮮やかさを取り戻してきました。とあるお宅の庭先でも菜の花が満開です。桜の蕾みも膨らみを増してきました。今年の桜の開花は例年より早いようで、二週間もしないうちに桜の便りが聞かれそうです。三月上旬のいまはあちらこちらで満開の梅を目にします。梅は桜以上に品種が多く、原種に近く小さな花を咲かせる野梅系から、杏との雑種で大きめの花を付ける豊後系など変化に富んでいます。最近は一本の木に紅白の花が同時に咲くものや、花びらに紅白が混ざっているものもあります。梅というと私は白梅の持つ楚々とした姿を思い描くことが多いのですが、これまで抱いていた梅に対するイメージがどんどん変わってきています。先日京都の城南宮で目にした満開の枝垂れ梅も、それまで梅に対して抱いていたイメージを大きく覆すものでした。城南宮は三年前の三月にも一度訪れたことがありますが、あいにくそのときすでに梅はほとんど散っており、梅に替わり様々な種類の椿が庭を彩っていました。枝垂れ梅が植えられているのは、神苑に入ってすぐの小高くなった春の山と呼ばれる一帯です。そこに百五十本近い枝垂れ梅が春の山を埋めつくすように植えられていますので、満開のときはさぞやと思いながら、三年を経てようやくその花の姿を目にすることができました。

思うような写真が撮れませんでしたが、少しでも様子をお伝えできたら幸いです。

春が天から降り注いでいるように無数の花が枝垂れ咲く姿は、見る者を圧倒します。白の枝垂れ梅もありますが、紅の方が圧倒的に多く、また写真映えもするとあって、皆さん紅枝垂れの前から動こうとしません。歩くのがやっとの混雑ぶりで、春の山の遠景を撮影できなかったのが残念です。

 

 

数は少ないですが、色の濃い紅枝垂れも。

 

メジロが盛んに梅の花の蜜を吸っていました。

 

春の山を回り込むと、日陰になった斜面を苔が覆っています。苔の緑の奥で空間を埋めつくすように咲く様子も見事で、これぞ紅色の春驟雨の景。

 

 

いまの時期の主役は枝垂れ梅ですが、本殿南側にある室町の庭に咲く紅白の梅も満開で、目を惹きました。

梅を見て圧倒されたのは今回が初めてで、いまだその余韻に浸っています。

 

 

 

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