寄り道東海道

山中八幡宮

赤坂・藤川間はおよそ十キロ。御油・赤坂間が一、七キロほどと短かったこともあり、歩いても歩いても到着しない感じがします。いよいよ疲れがたまり足が重くなってきたころ、ふと進行方向左手の田圃に目をやると、奥には緑濃い低山が続き、その山の方へと通じる小径には大きな常夜燈が立っています。常夜燈から右へ視線を移すと、山の麓に赤い鳥居が見えます。

なんとなく惹かれるものがあり、神社に向かいました。

 

山の麓に鎮座しているのは山中八幡宮。創建は飛鳥時代の朱雀十四年(六九九)、当地に住む山中光重という人が夢のお告げで八幡大神をお迎えし創建したと伝わりますが、八幡信仰が全国に広まるのはもう少し後の時代なので、この御由緒は後からのものではないかと思います。

  

 

それはともかく、山中八幡宮は三河の一向一揆で追われた家康が身を隠したと伝わる洞窟があります。

山中にある境内、木立に覆われ昼間でも薄暗い中、奥へと進んでいくと、その洞窟がありました。

  

追っ手がこの洞窟の付近まで来たとき、中から二羽の鳩が飛び立ったことから、そこには人はいないだろうと追っ手は去っていったと伝わります。その言い伝えから、この洞窟を鳩ヶ窟、神社のある山を御身隠山と呼ぶようになったそうです。

このあたりは三河高原の山々の南西端に位置し、旧東海道や国道、名鉄はその山々の間の断層の谷間を通っていることが地図からもおわかりいただけるかと思います。家康の話は伝説ですが、このような土地ならではの話でしょう。

 

関連記事

  1. 寄り道東海道

    影取池伝説

    戸塚から藤沢に向かって歩いていると、影取町に入ります。影取町……

  2. 寄り道東海道

    水口屋

    興津の旧街道を歩いていると、斜め前方に黄土色の長い塀が見えてきます。明…

  3. 寄り道東海道

    一の谷遺跡

    旧東海道の取材をしていたころですから、今から八年ほど前になります。見付…

  4. 寄り道東海道

    粟田神社

    京の都には都と諸国とを結ぶ街道が集まっていました。その街道の出入り口は…

  5. 寄り道東海道

    遍照院

    ある日の早朝、名鉄の知立駅構内にある小さなお堂前で、女性が熱心に手を合…

  6. 寄り道東海道

    女人堤防

    庄野宿を出ると旧東海道は汲川原町に入ります。江戸時代は下の写真にあるよ…

最近の記事

連載記事

  1. 登録されている記事はございません。

アーカイブ

  1. 古社寺風景

    昆陽寺と昆陽池
  2. 心に留まった風景

    大田神社の杜若
  3. すばらしい手仕事

    常滑焼
  4. 古社寺風景

    いくたまさん
  5. 手がけた書籍(高橋英夫の本)

    父・故高橋英夫のエッセイ集『五月の読書』(岩波書店)刊行のお知らせ
PAGE TOP